町田市の谷戸

【奈良ばい谷戸】
この地域は旧住都公団が区画整理事業を実施するため買収していた地域。ところがその後の経済情勢で採算を理由に中止になり、旧住都公団に売られた谷戸や里山は荒廃したまま放置されてしまった。そこで、町田市は、旧住都公団が買収した谷戸や里山を買い取り、再生し、農と緑の街づくりのモデルに育てようと考えている。市は、再生にあたり市民の力を活用することにした。
奈良ばい谷戸の里山再生活動は2005年から始まっており、協力する市民団体は「NPO法人まちだ結の里」となっている。
この谷戸の先端を上がった丘は、鎌倉時代に小山田氏支配の小野路城があったと伝えられており、奈良ばい谷戸は小山田城との重要な通路になっていたと言われている。

【南谷戸】
明治14年作成の三輪村の地図によると鶴見川に向かって3つの大きな開析谷が深く切り込んでいる。谷の開口部は3つともほぼ北東方向に向いており南東側が深い山林地帯になっており、人々はこれら3つの谷間を中心に生活を営んでいた。
またこの地域に白坂横穴墓群や西谷戸横穴墓群が存在することは、古墳時代からの歴史ある地域と考えられる。
土地の古老曰く「昔は隣の谷戸に行くためには山越えより下に降りて行くほうが楽だった」 相当な仕切りの山林があったのだろう。
しかしながら、三輪土地区画整理事業によって、3つの谷戸は殆ど全て埋められてしまった。

【片所(かたそ)谷戸】
京王線多摩境駅から徒歩10分の近さにある小さな谷戸である。「小山のホタルと自然を守る会」によって水路や観察通路の整備、主たる樹木に名札付け、下草刈りなどが行われており、簡単に立ち寄ることが出来る。
この小さな谷戸が注目を集めたのは、2003年に新種の桜、ホシザクラが50株も群生していることが発見されたことによる。ホシザクラは1992年に初めて、多摩丘陵で見つかった。5枚のがくの形が、星のように見えることから、この名がついた。見つけた富山県中央植物園の大原隆明主任によると、野生個体は多摩丘陵の4〜5カ所で計100株程度しかないという。環境省も2007年、ごく近い将来に絶滅しかねないと、危険度の最も高い「1A」に指定した。大原主任は「片所谷戸は最大の群生地の可能性が高い」という。

【五反田谷戸】
五反田谷戸は谷戸の中央にある老サクラが春には見事と言うことで人気の谷戸である。
この地域は図師小野路歴史環境保全地域である。 全国でも例を見ない保全地域内の地元農家による環境保全が行われている。
ここで収穫された米は販売出来ないとのこと、このあたりの事情は誰かに聞かなくては・・・。 この件、市役所経済観光部北部丘陵整備課で尋ねたところ、都所有の土地(保全地域の約50%)については、管理を管理組合に委ねているのであって、収穫物は外販出来ない。当然の事ながら個人所有地のものは外販出来るが・・・とのこと。
その後この規制は東京都環境局が定めたガイドライン「保全地域から産出する副産物の取り扱いについて」で、資源を公共的施設への配布以外に地域外に持ち出すことが禁止されていることが判明した。 これでは間伐した間伐材は放置し自然に腐るのを待つしかない。昔は間伐材で炭を作っていたそうだが・・・。